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2005年12月12日(月)

王朝時代のフラ

王朝時代のフラ
1778年にキャプテン・クックがハワイに訪れた当時推定30万人といわれたハワイアンの人口は、約1世紀後カラカウアが王位に就いた1874年にはおよそ5万人にまで激減したといいます。主にアメリカからの植民の増加や捕鯨船の寄航によって数々の伝染病がハワイにもたらされた結果の大量死です。ハワイアンの人口はたった100年で6分の1に減ってしまったのです。
1819年、ハワイアンの社会基盤となっていたカプ(タブー)・システムが廃止され、ハワイは西洋的な政治・経済・習慣のシステムに移行していくことになります。同時にハワイアンの先住民族的価値観と精神性は音を立てて崩壊していきました。1820年に始まるアメリカ宣教師による布教活動が、伝統ハワイの崩壊に拍車をかけます。祭壇であるヘイアウは取り壊され、カフナと呼ばれた聖職は廃止され、ハワイ的伝統や信仰は否定され、邪教として排斥されました。フラは「野蛮」で「みだら」なものとして格好の攻撃対象となり、宣教師たちによって禁圧されはじめます。
1830年にはキリスト教の洗礼を受けたハワイアン、クイーン・カアフマヌが公共でのフラ・パフォーマンス禁止の条例を出すにいたります。



フラを継承するクムフラは、伝染病による死をまぬがれたとしても、公然とフラ教育やフラ・パフォーマンスを行えない状況に追い込まれた格好でした。自らの民族的伝統や神聖観を否定され、ハワイアンとしての精神性の土台を失ってしまいつつあったのが当時のハワイアンの置かれた状況でした。王朝での祝宴など限られた場所でフラ・パフォーマンスが行われることはありましたが、大衆のフラはすっかり影を潜めてしまいました。

宣教師の倫理主義的教育によって「改宗」させられたハワイアンのなかには、積極的にフラを否定する者もいたようです。1875年、あるハワイアン・ライターはこう書いています。
「ここホノルルのホノカウプでもフラの師である男が、弟子たちに訓練をしている。彼は午後になってから仕事を始める。そんな男は浮浪者と言えないだろうか?このような人間を取り締まる法律はないのか?鳥の羽がついたガラガラ鳴らす楽器の音は騒音だ。背徳行為をする男を家主ともども捕まえて罰金刑の処罰を与えたまえ。」

このような社会状況のなかでしかしフラは完全に闇に葬られることなく、宣教師たちの目の届かない人里離れた郊外の土地でひっそりと生き延びていました。

メリー・モナーク(陽気な君主)と呼ばれたカラカウアがハワイ王朝の君主となっていた期間(1874年から1891年)はハワイのルネッサンス、古典文化復興の時代と言われています。失われていくハワイ的精神を蘇らせるために君臨した彼のおかげで、それ以前50年ほどの間抑圧され続けた、フラをはじめとしたハワイの伝統文化が再び見直され公共の場で日の目を見るようになったのです。
禁圧の時代を生き抜き伝統文化を守ってきたクムフラたちの存在のおかげで、残存する古代の唄と踊りは消滅の危機を逃れました。多くのものを失いはしましたが、このとき掘り起こされ保存された唄と踊りがあったからこそ、現代に伝わるフラ・カヒコが生き長らえることになりました。

ハワイにもたらされたウクレレなどの楽器を取り入れた新しいレパートリーも数多く作られるようになり、伝統的古典スタイルのフラとは違う別の流れとなるフラ・アウアナが生まれたのもこのころでした。

カラカウア王が自ら先頭に立って行った、失われた文化遺産回復の試みによってフラは公共の場に戻り、生きた芸能として花開くことになります。
1886年、カラカウア王50歳の誕生式典が行われたイオラニ宮殿での盛大なフラ・パフォーマンスは、文化復興のピークに達した瞬間でもありました。

<参考文献>
HAWAIIAN HULA AND BODY ORNAMENTATION 1778 TO 1858 (Caroline Katherine Klarr), Bearsville Press
HULA: HISTORICAL PERSPECTIVES (Dorothy B. Barrere, Mary Kawena Pukui, and Marison Kelly), Bishop Museum Press
THE ART OF THE HULA (Allan Seiden), Island Heritage Publishing
投稿者 Daisuke 11:04 | コメント(3) | トラックバック(0) | 踊る島人(フラ・タイムマシン)
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はじめまして。
上記でご紹介いただいたTHE ART OF THE HULA の翻訳者です。本来の専門とは違うのですが、奥の深い世界を覗き見られて貴重な経験でした。以下の記事で本の事にも触れています。ご参照いただけましたら幸いです。

http://arima.livedoor.biz/archives/50027331.html#comments

http://arima.livedoor.biz/archives/17070418.html#comments
>かおりさん
あの本を翻訳されたのですか。すばらしい!
コメントありがとう。僕は英語版しか持ってないんだ。今度購入します。
実は門外漢なので、数ヶ月で膨大なハワイアンライブラリができました・・・今でもビショップ博物館で買った『ハワイ王家家系図』が目の前に張ってあります。あと、日本語版はIsland Heritage社でも同時製作したので、米国版もハワイで売ってます。よろしければ、どうぞ。
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ナビゲーター Nui Daisuke
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雑誌、インターネット、ラジオなどのメディアで、フラとハワイアン・ミュージック、ハワイの文化と自然の魅力について発信している。文筆家、コーディネーター、ナレーター、写真も少々。
ハワイ在住16年、ハワイ大学卒業。
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